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誰かの世迷い言

舞台の感想と雑記です

感想︰舞台『ノラガミ -神と絆-』

※前作見てません。原作未読(Wiki知識のみ)

 

◆ざっと感想
 結論から言うとおもしろかったです。ノラガミ好きな人には是非観てほしいし、知らない方でもノラガミの知識をつけた上で観たらおもしろいんじゃないかな。
久しぶりの2.5次元。2.5次元らしい、キャラクター性を全面に押し出した舞台でした。初見の感想と、2回、3回と見ていくうちに抱いた感想が全く違う舞台。
 最初は正直「ストーリーは微妙だなぁ」と感じてしまった。原作を読んでいないため、特段ノラガミのキャラクター達に思い入れもないし、物語の主軸でありクライマックスの鍵にもなるオリジナルキャラクター達にあてる焦点も少ない。感情移入ができなくて、つい仏のような顔でクライマックスシーンを眺めてしまった(初日だ。ちなみにすすり泣きは聞こえた)。用語が多く、また物語において前提となっているキャラクター達の関係性(敵対関係、因縁関係)があったりしてついていけなかった部分もあったのだろう。
 全体としてコンパクトにまとまっているものの、途中で間延びしたなと感じるシーンもありつつ。殺陣はすごい。ダイナミック。迫力がある。中村龍介さんの殺陣がものすごいので是非見てほしい。演出と照明効果もすごいです。プロジェクションマッピングは視覚を飽きさせないし、神器召喚のシーンは舞台ならではの臨場感だと思う。

 そんなこんなで、あまり期待せず二回目を観た。正直めちゃくちゃ感動して泣いた。颯丸と敢御の関係性に胸をうたれたし、感情を全面に押し出した演技に涙を誘われた。一回目と二回目のこの感想の違い、受けた衝撃の違いはなんだったんだろう。予め敢御の信頼と、颯丸の思いを知っていたことっで、脚本の中に細かく織り込まれた演技を感じることができたのだろうか。
 中村さんは細かいお芝居に味がある方だと思う。ご本人の代表作(と私が勝手に思っている)【メサイア】の三栖公俊という役は、あまり動きがない。ご本人の言葉を借りれば、いわゆる「静」のタイプのキャラクターだった。そんな役だからこそ、目線や細かい仕草でお芝居をするよう、誰も観ていないかもしれない小さい動きにも意味があるように心がけていらっしゃるようだが、そんな中村さんの良さが出ていたように思う。
 そして二回目ともなると、ノラガミの原作キャラクター達にも愛着がわいてくる。特にお気に入りになったのは小福ちゃん。本当に小福ちゃんかわいい。子供のようなあどけなさの残る笑顔が印象的だ。演じている糸原さんのスタイル(特に足)が本当に綺麗です。

 

◆殺陣
 プロジェクションマッピングと、役者さんの動きが融合した殺陣は圧巻の一言。舞台の構成をみても、殺陣のボリュームはかなり多いほうに分類されると思う。敢御は小さな剣と小さな盾で素早くもダイナミックな動きを。毘沙門天は様々な武器を持ち替えながら戦い、夜トは二刀の刀をとてもなめらかに振り回しながら戦う。メインキャラクターで殺陣を披露するのが三人と、ノラガミの総キャスト数に比較して少ないものの、物足りなさなど感じさせないパワーがあった。
 特に、プロジェクションマッピングと融合している点が新鮮。映像で投影された妖を斬って、奥から夜トが登場する演出は、舞台とはいってもファンタジー性を感じられてとても好きだ。

 

◆まとめ
 ノラステ第二弾、おもしろいです。いっぱい観たくてリピートしてます。
 一回目のノラステはあまり評判がよくないと聞いていたが、今回のノラステはそれに比べるとなかなか面白かったのでは。一回目を観た友達の感想も今度聞きたいと思います。千秋楽まで楽しみです。

感想︰舞台『紅き谷のサクラ』

紅き谷のサクラがとても良かったという話。

Kitty Entertainment Presents「紅き谷のサクラ 〜幕末幻想伝 新選組零番隊〜」

根本正勝さん初めての演出作品。昨年末にキティのイベントにて、根本さん作演出で上演された『ラストデイ』がすごく良かったので、初日を前にしてすごくわくわくしていたのが記憶に新しいです。チラシの「大胆×繊細×刺激的×可憐×残酷」と「零番隊」という響きに「厨二病系かな?」と思いながらの初日。

 

◆所感

まるで少年マンガのようなキャラクターの濃さに、2.5次元舞台を見ているのかと錯覚したほどだ(悪い意味ではなく)。とにかくキャラクターがたっている。人斬りの運命に苦しむ最強隊長、天音屋サクラ。時に優雅に時に荒々しくだけど病気属性持ちの参謀役、柊一茶。無骨者だけど実は優しい、でも超がつくほど女嫌いの槍使い、桐山甚兵衛。ちょっと女の子みたいなかわいさがある医療担当兼双剣使い、染井蘭。メインキャラクターは四者四様、一言で言うとオタクが好きそうな感じ。そして敵役とサブキャラクターも良い味を出しているのだ。特に鏡止水という敵役がこの作品に華を添えている。カリスマ性のある胸糞悪い下衆野郎、最高です。

シナリオは王道。あっと驚く展開こそないけれど、その分キャストの方の演技が光っている。ただ、残酷。「ここで死ぬ!?」ってところで死ぬ。ばんばん死ぬ。演出の付け方がえぐい場面も。人の死体を抉るシーンのSEがリアル。生首だって登場する。だけどもちろん、残酷なだけじゃなくて。誰かを思う思いが『紅き谷のサクラ』のキャラクター達にはそれぞれ息づいていた。そうした残酷さの中に見える「愛」こそテーマなのかもしれない。

あと個人的な感想。サクラがひとりひとりの頬に紅(もしくは血?)を塗って最終決戦に向かうシーンがとても好き。見てる時に演出の根本さん本当に最高だなと思いました。最終決戦に向けての覚悟と奮起をああいう形で見せられると熱くなる。

 下記、特筆したいお二方について。

 

◆玉城裕規さん(天音屋サクラ役)

主演。玉城さんのおどろおどろしい、どろどろした負の感情の表現がとても好きなので、今回の役どころはとても見応えがありました。人斬りとしての運命に抗おうと苦しみもがき、つかの間の幸せすらもその手に掴むことは叶わなかった。そんな残酷な現実に苦しむ1人の人間の人生を、玉城さんは板の上で生きている。わたしが玉城さんの演技が好きな理由のひとつに「感情が生々しい」っていうポイントがあります。生々しい。恨み苦しみ悲しみ怒りがまるでエネルギーの波みたいに客席まで伝わってくる。その熱量に圧倒される。主演なだけあって、そういう見どころが何度もありました。特に圧巻なのは生首を取り出す場面。

でも、玉城さんは演技だけじゃないんです。殺陣のスピードとダイナミックさが飛びぬけてるんですよね。今回玉城さんは刀を使う殺陣なんですが、凄まじいスピードで刀を舞台上で振り回しています。アクションという意味でも見応えがすごい。繊細かつ可憐かつ大胆です。たぶん「大胆×繊細×刺激的×可憐×残酷」は玉城さんの殺陣を表しているのでしょう。違うと思うけど。でもそんな言葉がぴったりです。

 

◆陣内将さん(鏡止水役)

今回のダークホース。それまでの陣内さんの印象は、『ミュージカル黒執事』のソーマだった。からのゲスの極み野郎・鏡止水。正直同じ方が演じているとは思えない。とても魅力的な悪役を演じられていた。頭のネジは外れていて、理不尽で、ゲスで不気味で何を考えているのか分からない。でも独自の美学と信念に従っている美しい悪役だった。特筆したいのは、セリフだけではなく動きにもその異常性が満遍なく発揮されていたこと。とにかく動きが気持ち悪い。嫌悪感をつのらせる。最高。こういった悪役、マンガやアニメだと時折見るがまさか舞台で見ることができるとは露ぞ思っていなかったのだ。それほど、異常性のある動きをするというのは中々難しいことなのだと思う。完成された動きから紡がれる言葉。カリスマ性のあるゲスキャラが好きな人の心に必ず刺さる役であったと思う。

紅き谷のサクラには、鏡止水以外に目立った悪役はいない。だからこそ、彼の異常性と嫌悪感が物語を盛り上げるためには必要だったのだろう。 鏡止水という存在のおかけで、物語は観客の感情を巻き込み一層の深みを獲得している。とにかくすごかった。

 

『紅き谷のサクラ』DVDは税込4980円と比較的お安めな部類に入るので、気になった方は是非。キティの通販サイトで買えます。玉城さんの感情表現と殺陣が好きな方、気になる方は是非。